丸善の150年間のデザインやシーンから、時代に思いをはせる旅。
丸善150年のコレクションをお楽しみください。
明治初期の丸屋善七店。現在の丸善日本橋店の場所にあった。
明治時代の店舗は江戸時代からの商家を借りた店舗で、客は土間に立ち、または椅子や上り框(かまち)に腰を掛けて、店員に書肆の名を云って注文すると、店員はこれに応じて階下の書棚や二階の書庫から書籍を取り出した。冬は火鉢を、暖かくなると大きい煙草盆を出して接待した。これが江戸時代以来のすべての書店の伝統的な販売方法。
洋書を買うためにヨーロッパ人がよく来店したが、靴を脱ぐ習慣がないために、そのまま畳の上に土足で上がることが多かった。店員はそのたびに「Please take off your shoes(どうか靴をお脱ぎください)」と注意したという。古参の英語の巧みな店員がいたときは良いが、新米で会話がろくにできないときは、手帖を開きながら「プリーズ・テイキ・オフ」というが通じないために、構わず靴のまま上がられ、「プリーズ、プリーズ」を連発しながら後を追いかけたことも珍しく無かったそうである。